三道思想と空手
以前、MBCラジオ「私の20世紀」の中で紹介された、先代宗家と横山キャスターとの対談集です。敬称は省略させていただきます。
「三道思想と空手」
宗家)特に「拳法」「空手」は、どちらかというと、仏教・道教・儒教、この三道思想によって作り上げられた、と私はいつも言っているんです。
すなわち、道教からは、老子の説いた不老長寿、あるいは養心養生法、いかにして百歳まで長生きするか、いかにして常に健康を保つかということを取り入れた、「医拳同源」という言葉が中国にはあるんです。
拳法と医学は同じ源だという。
これは、中国の「漢方医学」のことですが、その漢方医学と拳法はさかのぼると、もとは一緒だったんです。「練拳治病」とも言います。
ですから、拳法の始まりは予防運動だったんです。
病にかからない予防運動として始まった。根源はそこから来てるんですね。
横山)なるほど。
宗家)唐の時代。今から一千二百年ばかり昔、医聖と言われた漢方医学の大家華陀がいた。この人が動物のいろいろな動きのなかから、今の空手の型の原形を作りあげたと言われてるんです。
横山)はあー。
宗家)この型を「五拳五法」と言うんです。
虎や鶴、猿といったいろんな動物の動作を取りいれて、現実の型ができたと言われています。今言った通り、道教からは健康のための予防運動を、儒教からは武道家としての礼法、あるいは守るべき信義を取りいれて精神要素にした。仏教との関係は御存知のように、「拳禅一如」というように道教・儒教・仏教、それぞれの特徴を取りいれてひとつのものを確立してきたと言われています。
横山)なるほど。拳がやはり中心になるわけですね。もちろん足もありますけれども。
宗家)流れとして二つに分かれています。
北派拳法は主に足を使い、南派拳法は主に手を使うということになっています。なぜかというと、北の方の民族は、いわゆる高原地帯の民族で騎馬民族だから、広い曠野を自由に飛び回って主に足を使った。
反対に南方の民族は、運河を船に乗って旅をした。狭い船の中では足は使いにくいから拳を使った。これが二つの拳法の違いだといえるでしょう。