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物を大切にする心

防具

道場に通う門下生や保護者の方から、「どうしたら上達することができるか?」との質問を受けることがあります。

一般論として、上達の方法としては、

1:稽古に集中して、真面目に取り組む。

2:指導者の意見に対して、素直に耳を傾ける。

3:稽古の数をこなす。努力に優る天才なしです。

4:常に先を読んで稽古する。

そして、最後に大切なことは、

5:道具を大切にする。

ということだと思います。

たとえば、

メジャーリーガーのイチロー選手は、学生時代からレギュラー選手の時であっても、部室の道具の手入れを補欠の後輩たちよりも率先して行っていたといいます。

スポーツメーカーのNikeが、イチロー専用のスパイクシューズを提案したところ、長年使っているモノが一番いいとして、丁寧にお断りしたことがあるそうです。

では、皆さんの空手の道場ではいかがでしょうか?

自前の防具を持っていない場合、道場の防具を借りることとなります。

稽古の始まりに「防具をお借りします」との挨拶ができているでしょうか?

これはただ単に、道場の先生に対して「防具を使います」と伝えるということではありません。

長年、道場の防具で汗を流してきた先輩たちに対する敬意や、この防具を後輩たちのために譲ってくれた篤志家のみなさん、自分の身体を保護してくれる防具に対する感謝の気持ちが、この「防具をお借りします」の言葉の中にはあるのだと思います。

組手の稽古が終わったら、正座して一礼、防具を外して、しみ込んだ汗を拭きとり、整然と紐で縛って、乾燥で型崩れしないようにします。

立ちながら防具を外したり、ポイッと投げるように仕舞う所作は、日本人として、武道人として、まったく美しい所作ではありません。

防具に限らず、空手道衣でもそうだと思います。

袖を必要以上に折り曲げて、フルコン空手衣の真似をしてみたり、いわゆる腰っぱきをしてみたり、等々。

「服装の乱れは、心の乱れです」。

自宅に帰ったら、稽古で付着した黄ばみや汚れを、心を込めて洗濯する。

シワの生じないようにキチンと干す。もしくは、アイロンをかける。

空手衣にアイロンをかけるのは、ジーンズにアイロンをかけるようなものです。

一見して、まったく無用の行為に思えます。

しかし、武道の本質の中には、「無用の用」というものがあります。

私たち凡人が考えの及ばない深淵な所作が、伝統武道の随所にはみることができます。

先人たちの知恵に学び、日本古来の伝統的な武道・空手道で、自己を鍛え上げてゆく。

ただ、勝負に強くなることだけ、他人を打ち負かすことが、武道ではありません。

不完全な自分自身に打ち勝つ、いわゆる「尚武」の精神を涵養することが、もっともっと大切なことだと個人的には思います。

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