宗家インタビュー⑤「百年先を思いては人を育てる」
月刊誌『致知』(致知出版社、2016年8月号)に、錬心舘総本山宗家 保 巖 先生のインタビュー記事「百年先を思いては人を育てる」が掲載されておりましたので、ご紹介させていただきます。
≪人間形成の空手道場として、世界23ケ国に広がっている少林寺流空手道錬心舘。
その起源はいまから61年前、鹿児島のたった6坪の道場に3名の高校生を迎えてのスタートだった。
父親である開祖の思いを受け継ぎ、今日の発展を築いた第二代宗家保巖氏に、いかにして一道を切り拓いてきたかについて伺った。≫
■武道で人づくりをし、荒廃した人心を再興したい
記者:そのお父様から教わったこと、学ばれたこととは何ですか?
宗家:私は6歳のころから空手を始めました。
父から手取り足取り習ったことと思われるかもしれませんが、ほとんど教えてもらえなかったですね。
ただ一度だけ、5年生くらいだったと思いますが、ある空手の型をみんなの前で何回も何回もやり直しさせられたことがあります。
その日は他に門下生がたくさん来ていたにもかかわらず、私の型のやり直しだけで稽古が終わってしまった。
具体的にどこがどう悪いとかは、一言も言わないんですね。
ただ、「もう1回!」「やり直し!」と厳しく言う。
私自身はしくじったつもりはないので、なんでみんなの前で何回もやり直しさせられているのか分からない。
あの時は、さすがに稽古が終わって泣きましたね。
いまだにどこが悪かったのか分からないですし、理不尽なようにも映ります。
しかし、今になって思うのは、技術云々を言っているのではなく、「どこが悪いのか」「なんでやり直しさせられなければいけないのか」を問うていること自体が思い上がりであって、その自惚れた心を正さなければならない。
満ちた月は必ず欠ける。
満足することは最大の敵であることを教えられたと感じています。
(続く)