拳友時報~やぶにらみ、拳学拳行~
【錬心舘神戸北支部のブログより引用】
少林寺流錬心舘の機関紙「拳友時報」は、昭和48年頃の初版から始まり、現在420号を超えている。
流派の技術等の解説本は、独自では一切世に出すことのない錬心舘にとって、「拳友時報」はまさに錬心舘の歴史を紐解き、拳学・拳行を導く貴重なバイブルである。
折々の時代や世相も伺い知ることができる。
拳友時報の中の「やぶにらみ」と題した辛口のコラムもまたしかり。
「学ぶ」ということ…というテーマで掲載している第424号のコラムの一部を抜粋して紹介しよう。
ノーベル賞候補になった、女子教育の権利を主張してイスラム原理主義のタリバンに銃撃され、奇跡的に一命をとりとめたパキスタンの少女マララ・ユスフザイさんであったが、その受賞は見送られた。
16歳という異例の若さや、受賞したため再びテロの標的となる恐れを避けるため、と理由は色々取り沙汰されているが、近年これほど世界中の賞賛を集め、平和賞の名に値する存在はいなかっただけに残念でならない。
テロの恐怖を乗り越え女性の権利と教育の大切さを命がけで発信している彼女の勇気に比べたら、「平和賞ではなく政治ショー」と皮肉られ、国際政治の力学によって選ばれたとしか思えない過去の受賞者たちは、大いに恥じ入り、自ら返上してもらいたいぐらいである。
たとえば、米政府と重大な密約を交わしておきながら、沖縄返還の業績で平和賞受賞者となった故佐藤栄作氏。
たとえば、具体的結果はまだ何も残していないのに、核無き世界を訴えた「プラハ演説」だけで口先受賞したオバマ大統領。
核廃絶の理想を口にしながら、彼はいまだに被爆地を訪れることすらしていない。
「一人の子供、一人の教師、一冊の本、一本のペンでも、世界を変えることができる」
スクールバス内での銃撃から一年足らず、銃弾摘出手術を経て奇跡の生還を果たした少女の口からほとばしったこの一節は、数奇な運命の重みと死の恐怖を克服した信念の強さで、「剣よりペン」という使い古された言葉に、新たな、そして永遠の命を吹き込んだ。
国連議場が鳴り止まぬ総立ちの拍手で彼女を迎えたのも当然である。
学びへの欲求はこんなにも切実で、人間にとって本源的なものなのだ。
貧しい人への支援の方法は、いろいろあるだろう。
しかし、援助の仕方や考え方を誤ると、それはときとして、援助する人とされる人の関係を不幸な形で固定し、あってはならない「ほどこし」や「依存」の歪んだ観念を生むもととなる。
これに対し、教師の派遣や学校の建設を含めた学ぶ機会の提供は、人の自立を促す本質的な支援であり、マララさんの言葉にあるとおり、適切に行われれば「世界を変える」唯一の道となる。
宗家がインドで連綿と続けている教育支援も、その一例といえよう。
「明日死ぬつもりで生きなさい。永遠に生きるつもりで学びなさい。」
自らも終生「学ぶ人」であったインド独立の父、マハトマ・ガンジーが残した、有名な言葉である。
以上、抜粋して紹介しましたが、毎回「やぶにらみ」コラムは報道新聞よりわかりやすく、焦点をついている。
そして、何より、読む者に問題を提示し、どう生きるべきかを示してくれる。
まさに拳学である。